コーヒーの種からカップまでの一連の流れ(from Seed to Cup)
今回はfrom Seed to Cup、コーヒーの豆(種子)からカップに至るまでの流れをご説明します。
栽培
そもそもコーヒーとはどういった植物かというと、アカネ科コーヒーノキ属(コーヒー属、コフィア属)に属する植物の総称で、主に栽培種(アラビカコーヒーノキとロブスタコーヒーノキなど)を指す。
コーヒーノキは畑に直接種をまくのではなく、苗床や育苗用のプラスチックポットで苗を育てる。
種をまいてから40~50日程度で発芽をし、半年から9ヶ月後、苗が20~60cmほどに成長した段階の雨季に畑へ移植を行う
移植後約1年経つと若木となり、早いところでは18ヶ月、遅くとも30ヶ月ほどで開花するが、幼木にはわずかしか花が咲かず、身が十分に付く成木になるには、3~5年かかり、そこからは収穫が増加し、丁寧に手入れを行えば20~30年ほど収穫することが可能。10年,20年経つと生産性が落ちてくるので、カットバックと呼ばれる若返りの手法や植え替えを行う。
収穫
コーヒーノキは枝の節に蕾ができ、開花する。花は白く、ジャスミンのような香りがし、咲いた花はわずか3日ほどで枯れてしまう。実がなるのは咲いた花の8割ほど。
結実すると緑色の丸い実ができ、完熟すると真っ赤になる。完熟した赤い実がサクランボに似ていることから、コーヒーチェリーと呼ばれている。
しかし、完熟するタイミングが一粒ずつ異なるため、一粒ずつ手でつまんで収穫を行ったり、機械で一斉に収穫を行い、後から未熟豆などを選別するという方法と取ったりする。
精製
コーヒーチェリーから生豆を取り出すことを精製と呼びます。カビなどの発生を防ぐために水分含有量が10~12%になるよう乾燥して保管され、消費地に輸出されます。
精製方法にはナチュラルやウォッシュド、比較的新しい方式としてハニープロセスなど、精製方法によっても味わいが異なります。
また、ウォッシュドでは大量の水を使用しますので、生産国によってはウォッシュドを採用することが難しいという場合もあります。
精製後は出荷に備え、スクリーンサイズ(生豆のサイズ)で分けたり、ハンドソーティングにより、未熟な豆や発酵豆などの欠点豆を取り除き、出荷用の袋に詰めます。
具体的には、グレインプロと呼ばれる、厚さ78ミクロンのポリエチレン製の袋は、70㎏までの重量に耐え、虫の混入を防ぎ、水分や酸素をシャットアウトする。また、リーファコンテナと呼ばれる温度管理のできるコンテナや、鮮度を保つために航空貨物として出荷することもある。
焙煎
「炒る・焙煎する」とは、食材に媒体を使わず直接熱を加えることによって、食材を適度に焦がし、食材が内部に隠し持っている風味や味を引き出すことである。
コーヒーの生豆は非常に硬くて、そのままでは有効成分をお湯で引き出すのが難しく、焙煎すると、生豆に含まれている水分が表面近くから水蒸気になって抜けて一旦表面の細胞組織が収縮し、仲間で熱が通ると今度は内側から膨張し、先の収縮との相互作用で、内側から破裂(ハゼる)すると、穴だらけの多孔質の構造になり、閉じ込められていたカフェインその他の成分が露出し、揮発しにくい油性成分も表面に滲み出してきて、味と香りの成分がお湯に溶け出しやすくなる。
抽出
抽出とはコーヒー豆から成分を取り出すことを抽出という
詳しくは以下の記事をご覧ください。
参考
コーヒーの抽出器具による味の違いについて
大きな枠組みでの抽出方法についてご説明しましたので、次は実際の抽出器具による味の違いについてご説明しましょう。
抽出器具と2つの抽出法
他にも様々な抽出器具がありますが、今回は以上の6つの抽出器具についてご説明いたします。透過法と浸漬法に分けるならざっくりこんな感じ
透過法
ペーパードリップ
コーヒーにお湯を注ぎ入れ、下に落ちて行きながらコーヒーの成分を抽出する。ペーパーフィルターで漉(こ)すため、微粉と油分が抽出されず、すっきりとしたクリアな味わいになりやすい。
また、ドリッパーには様々な種類があり、使用するドリッパーによっても抽出速度が異なるため、使用する器具によっては湯だまりができやすく、浸漬の割合が多くなるものもある。
例えばHARIOのドリッパーは大きな一つ穴のため、抽出速度が速く湯だまりができづらいが、メリタの場合は小さな一つ穴で、ドリッパー内に湯だまりを作ることを前提に抽出を行うため、一定時間浸漬の状態が作られます。
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ネルドリップ
抽出の仕組みはペーパードリップと同じですが、ペーパーフィルターの代わりにペーパーよりも目の粗い布製のフィルター(ネル)を用います。日本で発達したネルドリップは深煎りを美味しく飲むための技法として発達してきた背景があり、油分をいくらか通し、泡と起毛が苦渋味を吸着してくれるため、コーヒーがまろやかな味になる。
使用後のネルの洗浄や保存に手がかかるせいか、最近ではお店で見かけることが珍しくなっている。
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エアロプレス
太い注射器のような構造の抽出器具、チャンバーと呼ばれる筒型の容器の底にペーパーフィルターをセットし、コーヒーの粉とお湯を入れ、浸漬した後に、上からプランジャーというパーツを押し込み圧力をかけて抽出をおこなう。
浸漬の調整、圧力による抽出速度の調整、ペーパーフィルターにより粉を漉すことができるため、豆の個性、強いボディ感、安定してクリアなコーヒーを抽出することができる比較的新しい抽出法
エスプレッソ
専用の抽出マシンを使って高い圧力(9気圧ほど)をかけて短時間でコーヒーを抽出します。一杯の抽出量は25~30mlと少量。際立ったフレーバーと官能的なマウスフィールを持つ、美味しさが凝縮されたコーヒーが抽出されます。
深煎りのコーヒー粉を用いることが一般的でしたが、サードウェーブによって、浅煎りのコーヒー粉でもエスプレッソを淹れるお店が増えてきました。
浸漬法
フレンチプレス
コーヒーの粉にお湯を注いで、どっぷり浸した状態で抽出。目がやや粗いステンレスフィルターで濾すため、コーヒー液に微粉が混ざり、色は濁ります。その分、下にのるとコクと重量感のあるコーヒーになります。コーヒー豆がもつ香りや味わいをダイレクトに味わえる抽出法
ちなみにわたしのイチオシのお店 MiCafeto ではフレンチプレスの特徴であるコーヒーオイルはそのままに、微粉をミクロン単位で漉すことができるステンレスフィルターを販売しており、ボダム社製フレンチプレスの0.35Lサイズ製品のフィルター部分を付け替えて使用することができます。
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サイフォン
下のフラスコで沸騰したお湯が上のロート部分に上昇してコーヒー粉と混ざり合い、そこで抽出される。沸騰湯で淹れられるために苦味が出ますが、ペーパーフィルターで漉されるため、フレンチプレスよりはクリアになる。
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まとめ
ペーパーフィルター
すっきりとしてクリアな味わい、ドリッパーも多種に渡る
ネルドリップ
まろやかな味わい、深煎り文化の中で進化した抽出法
エアロプレス
豆の個性を味わいやすい、比較的新しい抽出法
エスプレッソ
際立ったフレーバー、官能的なマウスフィール、高圧力短時間の抽出法
フレンチプレス
ボディ感とコク、コーヒーオイルを含め、コーヒーの全てを味わえる抽出法
サイフォン
苦味とクリア感、見た目に美しく、安定した抽出法
抽出器具による味の違いを理解して、ぜひ自分好みのコーヒー探しに役立ててみてください。
参考
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コーヒーの3大原種
今回はスペシャルティコーヒーやシングルオリジンを語る上で欠かせない、コーヒーの3大原種についてご説明します。
コーヒーの3大原種
原種とは交配、選抜などにより改良された栽培品種の元になった野生種
- アラビカ種
- ロブスタ種
- リベリカ種
世界で飲まれているコーヒーのほとんどはアラビカ種とロブスタ種で、アラビカ種は70~80%、ロブスタ種は20〜30%程度、リベリカ種はごくわずかです。
アラビカ種
香りが強く、まろやかな味と酸味。主にレギュラーコーヒーに使われる。セブンカフェやスターバックス、また、一般的にシングルオリジンのコーヒーはこの品種。
ロブスタ種
芳香は少なく、渋みと苦みが強い。ブレンドの増量用やインスタントコーヒーに使われる。
しかし、コーヒーにより深い「コク」と「パンチ」をブレンドするため香りの強いロブスタコーヒーが好まれることもあり、品質の良いロブスタコーヒーの豆はエスプレッソ用のコーヒーのブレンドに用いられることもある。
アラビカ種と比較し、病気に強く、低地で栽培が可能、成長が早く収穫が多いなど、栽培が容易である。
リベリカ種
芳香は少なく、渋みがある。
リベリカ種の木は大きく、10m近くに育つため、手入れをしたアラビカ種が2.5m程度であり、収穫のしやすさを考えると生産性が低い。
参考
コーヒーノキの生育条件
よく飲むけど意外と知らないコーヒーのことについて、今回はコーヒーノキの栽培、生育条件についてご説明します。
第一に
コーヒーノキは高温多湿を嫌うため、年間平均気温が20〜23℃の涼しい場所が適していると言われています。30℃〜35℃の気温が5日以上続くと枯れてしまったり、霜が降りると枯れてしまったり、熱さにも寒さにも弱い植物です。
他にも強い日差しを浴びると褐色に日焼けしてしまったり、水はけが悪いと根腐りを起こしたり、降雨量が足りないと枯れたりします。
そのため、以下のものを中心に様々な気象条件が整っていることが必要になります。
- 気温
- 雨
- 日差し
- 土質
コーヒーの生産地
コーヒーの主な生産地はコーヒーベルトと呼ばれる、赤道を挟んで北緯25度から南緯25度の範囲に属しています。
緯度が低く年中温暖な地域のことを熱帯(熱帯 - Wikipedia)といい、年間を通して日射量が多く、高温、多雨であるため、コーヒーの栽培に適しているとは言えません。
そこで、標高の高い、高原や山地で栽培されています。水はけがいい斜面や直射日光を遮る霧など、様々な条件を足していくと、標高の高い、高原や山地での栽培が適しているといえます。
コーヒーの品種による違い
参考
シングルオリジン (Single Origin) コーヒーとは
「単一品種」などと訳される「シングルオリジン」
それだけでは魅力が伝わらないし、重要な部分が抜け落ちていると思うので、改めてご説明します。
シングルオリジンを単語単位に分解してみる
single : たった一つの、唯一の
origin : 起源、生まれ
繋げるのであれば、「たった一つの生まれ」という感じかな
シングルオリジンとは何か?
産地だけでなく、特定のエリア、農園、農園内の限定された畑、さらに品種などを特定できて、生産現場をある程度まで遡れる情報を持つ高品質のコーヒーという概念で使われています。
どこまで遡れればシングルオリジンなのかということについては明確な定義などはありませんが、少なくともエリアまでは絞れているといいかなと思います。
例えばMiCafeto様の商品のSM サン ミゲル
生産国:グアテマラ
生産地:アンティグア
農 園:サン ミゲル農園
シングルオリジンだと何が嬉しいのか
シングルオリジンとは、トレーサビリティ(追跡可能性)に優れているコーヒーだと言えるのですが、それによって生産者側・消費者側で何が嬉しいのか説明していきます。
生産者側のメリット
例えば、サン ミゲル農園で最高に美味しいコーヒーを栽培していたとしても、グアテマラコーヒーとしてまとめられてしまっては、質の低いコーヒーとブレンドされてしまうかもしれないですし、仮に美味しいグアテマラコーヒーになったとしても、サン ミゲル農園が評価の対象になることはあまりないでしょう。
しかし、「グアテマラ サン ミゲル農園のシングルオリジンのコーヒー」として売ることで、サン ミゲル農園のコーヒーだから美味しいんだなと理解でき、評価されます。
そのため、シングルオリジンとして売ることで、生産者側は手間暇をかけて美味しいコーヒーを栽培する理由ができます。
消費者側のメリット
消費者側としては以下のようなものが挙げられます。
- 全体的なコーヒーの質の向上
- 個性的な風味特性を持つコーヒーの増加
- 自分にとって最高のコーヒーを探しやすくなる
生産者側でお話しした理由によって、全体的なコーヒーの質の上昇・個性的な風味特性を持つコーヒーが増加します。
さらに、「自分にとって最高のコーヒーを探しやすくなる」というメリットが挙げられると考えております。
例えば、グアテマラ アンティグア サン ミゲル農園のコーヒーは好きだけど、何かほんのちょっと違うな....と思ったら、グアテマラ アンティグアの別の農園のコーヒーを探してみたり、サン ミゲル農園の生産者が経営している別の農園のコーヒーを探してみるとか、そういったことができるようになります。
農園主を調べ上げて、その農園主が経営している別の農園を探す、というのはまだまだ難しいかと思いますが、同じ生産地の別農園を探すということは比較的簡単にできますので、自分好みのコーヒーを見つけたらどこのコーヒーなのかを覚えるようにすると、さらに自分好みのコーヒーを見つけやすくなりますので、ぜひ意識してみてください。
まとめ
シングルオリジンとは
産地だけでなく、特定のエリア、農園、農園内の限定された畑、さらに品種などを特定できて、生産現場をある程度まで遡れる情報を持つ高品質のコーヒーという概念で使われています。
生産者は正当な評価、それに見合った報酬を受け取ることができるようになり、美味しいコーヒーを栽培するモチベーションになる。
消費者は、より美味しい、より個性的なコーヒーが飲めるようになり、自分好みのコーヒーを探しやすくなる。
おまけ
さらに細かい区分もあります。
シングルカルティバー
単一栽培種の豆
シングルエステート
ひとつの農園だけの豆
シングルロット
ひとつの畑の豆
参考文献
Coffee Hunting Note 100カップログ[Lite版]
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コーヒーの抽出 透過法と浸漬法の違い
そもそも透過法と浸漬法って何?
どちらも読んで字のごとくというところですが、
透過法
コーヒーの粉に対してお湯を透過させる抽出法
例えばネルドリップやペーパードリップ、以下のようなものなど
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浸漬法
コーヒーの粉をお湯を浸すような抽出法
例えばサイフォンやフレンチプレス、以下のようなものなど
【正規品】 BODUM ボダム CHAMBORD フレンチプレスコーヒーメーカー 0.35L 1923-16J
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透過法と浸漬法の違いとは
もっとも重要なことは、「浸漬法よりも透過法の方が成分が濃縮されて抽出される」ということでしょう
Σ(゚Д゚ノ)ノ 「浸して続ける浸漬法の方がたくさんの成分が抽出されるんじゃないの!?」と思われるかもしれないですが、残念ながら違います。
浸し続けた場合はお湯に対して成分が溶け出し続けますが、以下の状態になるとそれ以上成分が溶け出さなくなります。
コーヒーの粉に残っている成分 = お湯に溶け出したコーヒー成分
それに対して透過法の場合は、成分が溶け込んでいない状態のお湯を足し続けることになりますので、透過法の方が多くの成分が溶け出すことになります。
そしてこれは溶け出しやすい成分についての話になります。少々分かりづらい話になりますが、コーヒー中の成分には溶け出すのが早いものと遅いものがあります。
ざっくりですが、酸味の方が早く溶け出し、苦味の方が溶け出しにくいなど....
そのため、浸漬法では良くも悪くも全ての種類の成分が満遍なく抽出されます。
まとめ
透過法:コーヒーの粉に対してお湯を透過させる抽出法
浸漬法:コーヒーの粉をお湯を浸すような抽出法
透過法では溶け出しやすい成分が多く抽出される
浸漬法では全ての成分が満遍なく抽出される
抽出の方式による違いを理解し、楽しいコーヒーライフを!
ちなみに・・・
SHOWROOMの配信で透過法といったり、透過式と言ったりしておりましたが、どちらでも大丈夫そうです。私としてはなんとなく「式」の方が言いやすいかぁ....
参考
抽出って何?コーヒーと紅茶の抽出って一緒?別物?
そもそも抽出とは何か?
抽出(ちゅうしゅつ、extraction)とは、化学的分離操作法のひとつで、液体または固体の原料を溶剤と接触させ、原料中に含まれている溶剤に可溶な成分を不溶または難溶性の成分から選択的に分離する操作をさす。抽出 - Wikipedia
コーヒーや紅茶でいうならコーヒー豆・茶葉から成分を取り出すことというところか
コーヒーと紅茶の抽出って一緒?別物?
基本的には一緒です。前述の通り、コーヒー豆・茶葉から成分を取り出すことを抽出といい。
例えばフレンチプレスという以下の器具ではコーヒーでも紅茶でも使うことができます。
というように両者ともコーヒー豆の挽き方や茶葉の大きさによって抽出時間や蒸らし時間を調整します。
コーヒーと紅茶の抽出の違い
強いて違いを挙げるのであれば、抽出の難易度だろうか。
紅茶に比べてコーヒーの方が味の不純物が多く、その不純物を表に出さないような高度な抽出技術が必要になるからなんです。
紅茶ファンには怒られるかもしれないが、紅茶の抽出難易度はコーヒーに比べればグッと低い。なぜなら雑味のもとになる成分が最初から少なく 、基本的によい香りの成分をいかに 「濃く /薄く 」出すかという一点に注力すればいいからだ 。